2019年、東急目黒線 武蔵小山駅前の東口で再開発が行われた。商業施設や住宅に加えて、広場 ”ザ・プラザ”も創出され、開放的な滞留空間が創出されている。
元来、全長が約800mにも及ぶアーケード商店街”パルム”が街のシンボルであった武蔵小山。この再開発では、個性あるまちづくりを推進する「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」(通称「しゃれ街条例」)に基づき「街並み再生方針」が定められている。本来、武蔵小山駅東地区として定められていた地区計画では、本再開発敷地では壁面位置のセットバックが必要とされる。しかし「しゃれ街条例」の再生方針の弾力的な運用により、壁面は後退することなく低層部に店舗が入居しており、既存商店街との連続性が確保された再開発となっている。
近年、武蔵小山は住みたい街ランキングや住みここちのよい街ランキングのトップ常連となっている。人気の商店街に加え、交通の利便性も高く、タワマンも増加している。
一方で、2016年にHOME’S総研所長 島原万丈により発表された報告書 “Sensious City 官能都市”では、色気ある街として武蔵小山が取り上げられている。闇市から発達したこの街ならではの界隈性・ダークな魅力が、防災性向上を武器とした駅前の没個性な再開発で失われてしまうと警鐘を鳴らす。
再開発への賛否はあるものの、駅前再開発で図られた既存商店街との連続性は、洗練された街への発展と街の個性継承への一成果と考えたい。この街が開発のもたらす利便・利益と共存しながら、個性ある地域性を継承していくためにも、新旧住民の調和ある街づくりに期待していきたい。