スペイン坂とは、渋谷区宇田川町にある坂の名称である。坂の下側にあたる井の頭通りから、坂を上った渋谷パルコの南側に面するペンギン通りまでを結んでいる。坂の歴史の始まりは70年代まで遡る。1973年に旧渋谷パルコが開業したことをきっかけに、周辺の街路が公園通りやスペイン坂として名前がつけられた。以来、スペイン坂は草の根的にストリートカルチャーを醸成し、渋谷を代表する坂として有名になった。カフェや飲食店、ファッション関連のショップなどが密度高く立地し、路地的な空間を構成している。
2019年には、渋谷パルコが店舗・劇場に加えてオフィスを取り込んでリニューアルオープンしたことで話題を呼んだ。スペイン坂から続く区道976号によって分かれていた旧パルコPart1・Part3は、都市再生特別地区制度によってひとつの街区に統合され、容積率が300%に割り増しされた。区道は廃道となる代わりに歩行者専用通路として生まれ変わり、スペイン坂を上ると、パルコ1階部分を通り抜けて敷地北側のオルガン坂までアクセスすることが可能となっている。
新パルコは建物外周を螺旋状に走る立体街路が特徴的であり、そこにはあたかも路面店であるかのようにコンテンツが張り巡らされている。渋谷の街づくり、先端カルチャーの発信、新しい才能を後押しするインキュベーションといったパルコが担ってきた役割と、「坂」「ストリート」「界隈」といった渋谷のコンテクストが空間的に体現されている。