南大沢駅周辺は、多摩ニュータウン西部地区の中心として開発され、「西部地区センター」として商業業務施設やその他公益的施設を整備することが位置付けられた。1988年に駅が開業し、1991年に駅北側に東京都立大学が移転した。駅の南端に配置された近隣公園から大学まで抜ける「南北軸」によって、歩行者専用の駅前空間が形成されている。南北軸の北端には、駅と大学の敷地の高低差を繋ぐために渦巻き状のデッキがデザインされ、非常に印象的だ。
ペデストリアンデッキにはキャノピーがあり、軸線上だけでなく駅南側のバスロータリーにまで雨除けとして設けられている。東京都立大学のキャンパス動線にもキャノピーが設けられており、駅とキャンパスを繋ぐ空間のデザインコードになっている。駅前のデッキ沿いには多くの商業施設が立地し、三井不動産によって2000年に開業された「ラ・フェット多摩」をはじめ、駅を中心に買い物客や学生によって賑わいが創出されている。
時代とともに住区の開発方法が異なるのが多摩ニュータウンの特徴だが、南大沢エリアは総合的な景観コントロールを行う「マスターアーキテクト方式」を取り入れて開発されている。1999年、東京都立大学の南西方向の土地に、マスターアーキテクトである内井昭蔵が設計を担当したベルコリ―ヌ南大沢が竣工した。住棟配置が画一的でないことに加え、建築のファサードが凹凸しており、壁面位置が揃っていないことでメリハリのある歩行空間が実現されている。