晴海アイランド トリトンスクエアは、晴海のウォーターフロントに位置する複合施設・住居群を指す。約8.5haにも及ぶ敷地は、かつては著名な団地”晴海団地”であった。
1955年に発足した日本住宅公団(現 UR都市再生機構)には、当時の日本が抱えていた住宅不足解消という使命があった。そこで米軍の接収が解消されたばかりの晴海の埋立地に目をつけ、東京湾の表玄関となる立地にふさわしい、前例のない高層のアパートが構想された。
実際に高層となったのは15の住棟のうち1棟にとどまったが、前川國男(事務所内の担当は大高正人)による設計のもと1958年に竣工した10階建の”晴海高層アパート”は、高層住宅の初期プロトタイプとして名を残し、八王子の集合住宅歴史館(2022年3月閉館、2023年赤羽台にて再オープン予定)で再現・展示された。
そんな晴海団地も、1997年に解体された。その跡地で行われたのが晴海一丁目地区市街地再開発。2001年に竣工した商業施設・オフィス・住宅からなる複合エリアは、ギリシア神話での海の神「トリトン」にちなんで「トリトンスクエア」と名付けられた。開発エリアではウォーターフロントに散歩道が設けられ、人工地盤上に公園緑地も創出されるなど、アメニティ創出を含んだ複合開発の先駆的事例となっている。
その公園緑地の一部である晴海第一公園は、晴海団地15号棟”晴海高層アパート”が建っていた場所。公園内にはかつての住棟の外廊下手すり・バルコニー手摺りが一部残されている。かつて大高正人は、晴海高層アパートをプロトタイプに、高層アパートを東京湾上に配置する海上都市を提案した。海岸の生態系を保全する意図のもと、海上都市は海岸線から離れた位置に作り出す提案となっていた。心地よいアメニティ空間が創出されたトリトンスクエアには、豊かな都市環境を創り出そうとする大高の思想が息づいているのかもしれない。