多摩地域の中核都市であり、かつ東京都心のベッドタウンでもある立川は、第二次世界大戦下は「立飛グループ」(現立飛ホールディングス、以下立飛HD)の有する陸軍飛行場や関連工場が集積していた。戦後米軍による接収を経た後、駅前は大規模開発により駅ビルが多く立地していく。1993年に策定された「立川駅前歩道立体化計画」に基づき、JR立川駅と多摩都市モノレールの立川北駅・立川南駅、そして周辺商業施設を繋ぐペデストリアンデッキが張り巡らされている。
一方で立飛グループは、市の約25分の1を占める所有地をスポーツアリーナや人工ビーチなどとして活用し、立川のまちづくりに尽力する会社となっている。手塚貴晴らによる「Fuji 赤とんぼ保育園」もグループの土地に建設された企業主導型保育園である。
そして2019年4月、COVID-19による緊急事態宣言の中、高架モノレール下の遊歩道に隣した南北約400m・東西約100mの細長の敷地に「GREEN SPRINGS」が開業した。立飛HDを事業主として生まれたGREEN SPRINGSは、許容容積率の500%を大きく下回る容積率200%に満たない床にオフィス・商業施設・ホテル・ステージ・保育所などを内包する、収益最優先でない複合施設となっている。
1階は主に駐車場で、遊歩道を歩く人々は2階・人工地盤上の緑豊かな広場へと誘いこまれる。かつて飛行場だったという敷地の由来から滑走路をモチーフに設計された広場を抜け、ステージ横のカスケードを上がれば、スカイデッキから敷地西に広がる国営昭和記念公園を一望できる。
当施設の「空と大地と人が繋がるウェルビーイングタウン」というコンセプトからは、地域の魅力・持続性向上を目指す立飛HDの街への想いが伝わってくると同時に、空に近づこうとする精神が伺える。駅周辺のペデストリアンデッキやGREEN SPRINGSのスカイデッキからは、飛行場が多く立地していた立川という街に根付く、空への親しみと憧れが感じられないだろうか。
一方、GREEN SPRINGSでは「大地」というキーワードも含められている。2020年、立川駅前歩道立体化については計画の見直しも含め検証が進められている。今後、立川駅前にも大地が表出していくのか、注目していきたい。